ご存じですか?令和8年1月1日以降着工の工事から、一部の工作物について、工作物石綿事前調査者による事前調査が義務付けられます。ここでは工作物石綿事前調査者について解説します。

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01工作物石綿事前調査者制度について

特定工作物17種を対象に石綿事前調査を行う工作物石綿事前調査者が新設されました。
特定工作物とは、アスベスト(石綿)が使用されている可能性が特に高いと厚生労働大臣が定めた設備や構造物のことです。
令和8年1月1日以降着工の工事から、特定工作物は工作物石綿事前調査者等による事前調査が義務付けられました
当該作業の請負代金の合計が100万円以上であるものは、Gビズによる事前調査報告が必要になります。(※建築物と異なり、延べ床面積による規定はありません。)

02工作物石綿事前調査者の調査対象範囲について

特定工作物は17種類に分類されています。
17種類のうち、工作物石綿事前調査者の資格を有するものでなければ石綿事前調査を行うことができないものが10種類、建築物石綿含有調査者の資格でも事前調査が可能なものが7種類となっています。

事前調査対象の区分け図

特定工作物以外の工作物
(①〜⑰)以外の工作物
例:エレベーター、エスカレーター、コンクリート擁壁、電柱、公園遊具、鳥居、仮設構造物、遊戯施設(遊園地の観覧車等)、上水道管
特定工作物以外の工作物の塗料その他の石綿等※7が使用されるおそれがある材料も事前調査の対象
Gビズ事前報告対象外
工作物石綿事前調査者または、建築物石綿含有建材調査者等※8
特定工作物
① 反応槽
② 加熱炉
③ ボイラー及び圧力容器
④ 配管設備※1
⑤ 焼却設備
⑥ 貯蔵設備※2
⑦ 発電設備※3
⑧ 変電設備
⑨ 配電設備
⑩ 送電設備※4
⑪ 煙突※5
⑫ トンネルの天井板
⑬ プラットホームの上家
⑭ 遮音壁
⑮ 軽量盛土保護パネル
⑯ 鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板
⑰ 観光用エレベーターの 昇降路の囲い※6
建築物とは構造や石綿含有材料が異なり、調査にあたり当該工作物に係る知識を必要とする工作物に分類される 建築物一体設備等に分類される
Gビズ事前報告対象
工作物石綿事前調査者 工作物石綿事前調査者または、建築物石綿含有建材調査者等※8
建築物
全ての建築物をいい、建築物に設けるガスもしくは電気の供給、給水、排水、換気、暖房、冷房、排煙または汚水処理の設備等の建築設備を含む。

※建築基準法における「建築物」とは定義が異なる。
Gビズ事前報告対象
建築物石綿含有建材調査者等
  • ※1 建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く。
  • ※2 穀物を貯蔵するための設備を除く。
  • ※3 太陽光発電設備及び風力発電設備を除く。
  • ※4 ケーブルを含む。
  • ※5 建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除く。
  • ※6 建築物であるものを除く。
  • ※7 塗料、モルタル及びコンクリート補修材(シーリング材、パテ、接着剤等)。
  • ※8 一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、令和5年9月までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者。

03工作物における主要な石綿含有資材と使用箇所

工作物に使用されてきたアスベストは、耐熱性・耐圧性・耐薬品性に優れていることから、主に高温となる設備の保温・耐火・断熱材や、配管等の接合部を密封するシール材として広く用いられてきました。
ここでは工作物の中でも特徴的な石綿含有資材を2種類紹介します。

1保温材・耐火材・断熱材

燃焼炉、ボイラー、タービンなどの高温設備や配管・ダクトには、熱の放散を防ぐために保温材が施工されていることが多くあります。設備本体に保温材を巻き付けて使用するほか、作業者が立ち入る部分など強度が求められる箇所には、「石綿含有けい酸カルシウム保温材」などの硬質材料が用いられている場合があります。保温材には、板状・筒状・ふとん状の「成形保温材」と、現場で水を加えて練ることで充填やこて塗りで施工される「水練り保温材」があり、設備の形状や用途に応じて使い分けられています。

ケーブル延焼防止剤

ケーブル延焼防止剤

煙突断熱材

煙突断熱材

2シール材(ガスケット・パッキン)

配管などの接合部を密封する材料を「ガスケット」、バルブやポンプの軸部など可動部分に用いられるものを「パッキン」といいます。配管フランジ部に使用される「石綿含有ジョイントシート」は代表的な例であり、耐熱性や耐薬品性、締付力への耐性に優れていたことから、工業プラント等で広く使用されてきました。業種によってはアスベスト規制後数年間も、アスベスト製品が継続して使用されました。その他にも下表に示すような多数の資材が工作物に使用されています。

ダクトガスケット

ダクトガスケット

配管ガスケット

配管ガスケット

レベル1資材について
レベル2資材について
レベル3資材について
炉設備について 電気設備について  配管・貯蔵設備について 建築物一体設備等について その他の工作物について

※掲載している資材は代表的なものであり、この他の資材でも調査が必要な場合があります。

特定工作物とアスベスト使用例

反応槽 化学プラント パッキン類・保温材を使用

反応槽 化学プラントパッキン類・保温材を使用

加熱炉 焼成用の電気炉 パッキン類・保温材を使用

加熱炉 焼成用の電気炉パッキン類・保温材を使用

発電設備 予備電源として使用 水練り保温材・石綿布を使用

発電設備 予備電源として使用水練り保温材・石綿布を使用

遮音壁 鉄道の防音用 成形板を使用

遮音壁 鉄道の防音用成形板を使用

04調査においての注意点

工作物の石綿事前調査では、詳細な情報を事前に把握することが重要です。依頼主との密なコミュニケーションが正確な石綿事前調査につながります。
以下のような点に注意して調査を行いましょう。

1納入仕様書の確認

機器類は設計図面ではなく、納入仕様書や製作図に詳細な資材情報が記載されていることが多いため、これらの資料は調査において重要なエビデンスになります。

2ヒアリングの活用

設置時期、改修履歴、定期点検記録について発注者や保守点検業者に聞き取りましょう。特にボイラー整備士などは、使用資材の有益な情報を持っていることが多いです。

3施工時期による判定

2006年にアスベスト建材の使用・製造が禁止されたのに対して、工作物の一部は2012年まで使用の猶予期間がありました。そのため工作物は、2006年以降製造のものでも調査対象となるケースがあります。

使用されている資材が石綿を含有していないと
判断できる条件

設備の種類 設置時期
全ての設備 2006年9月1日以降に設置された資材
(下記の設備 資材の組み合わせを除く)
非鉄金属製造業施設の設備 2007年10月1日以降に設置されたガスケット
鉄鋼業施設の設備 2009年4月1日以降に設置されたガスケット
またはグランドパッキン
化学工業施設の設備 2011年3月1日以降に設置されたグランドパッキン
化学工業施設の設備 2012年3月1日以降に設置されたガスケット

4銘板の確認

機器に貼付された製造銘板や工事銘板を確認し、型式や製造年が書面と一致するか確認しましょう。銘鈑からメーカーに問い合わせることで、アスベストの使用箇所を特定できることがあります。

5安全確保の優先

工作物の調査では、高温・高圧な設備や、感電の恐れがある電気設備、ボイラーに使用される薬液など、危険な箇所が多く存在します。調査できなかった箇所については後日調査を行うか、調査できなかった箇所や事由を報告書に記載します。無理な解体作業は、転落や事故の引き金にもなりかねないため、安全確保を優先しましょう。

05RCF(リフラクトリーセラミックファイバー)について

RCFは人造鉱物繊維(MMMF)の一種で、工作物においてはアスベストの代替製品として使用されています。
アルミナ(Al203)とシリカ(SiO2)を主成分とした非結晶繊維で、1400℃まで使用できる耐熱性が特徴です。
国際がん研究機関(IARC)では「ヒトに対する発がんの可能性がある」と分類されており、重量の1%を超えて含有するものは特定化学物質として規制されています。

使用例

  • 炉のライニング材
  • 防火壁保護材
  • 高温用ガスケット・シール材
  • タービン
  • 絶縁保護材
  • 伸縮継手への耐熱性充填材
  • 炉の絶縁材
  • 熱遮蔽板
  • 耐熱材
  • 熱によるひび・割れ目のつぎあて
  • 炉・溶接場のカーテン

AES (アルカリアースシリケートウール)について

AESはRCFと同じ用途で使用され、目視による判別が困難です。
RCFと異なり生体分解性を持ち、体内に取り込まれた際にもマクロファージ等により分解・排出されやすい特性を持つため、発がん性物質に分類されていません。
人造鉱物繊維(MMMF)の多くは見た目で判別することは出来ませんが、小田原鉱石ではEDS元素分析により主成分のシリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)を確認することで、RCFと区別してご報告いたします。

小田原鉱石では
RCF分析も行っております

位相差顕微鏡による分散染色法、走査型電子顕微鏡による元素分析を組み合わせて、RCFの有無を判定します。

RCFの分析例

分散染色法

分散染色法

電子顕微鏡写真

電子顕微鏡写真

EDS元素分析

EDS元素分析

AESの分析例

分散染色法

分散染色法

電子顕微鏡写真

電子顕微鏡写真

EDS元素分析

EDS元素分析

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