
この記事を書いた人

髙橋 淳
(たかはし じゅん)
小田原鉱石株式会社 代表取締役
2015年にアスベスト調査・分析を専門とする小田原鉱石を設立し、代表を務める。行政施設、工場、ホテルなど幅広い建物の調査実績を重ねてきた。関連団体セミナーの登壇経験も多数あり、現場に近い分析会社として日々のアスベスト課題解決に取り組んでいる。
「新しい建物ならアスベスト建材は使われていないはず。でも、いつ着工した建物なら、アスベストの事前調査が不要になるのだろう?」
解体や改修工事を前に、こう疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
アスベストを含む製品は、2006年9月1日に製造・使用などが原則禁止されました。ただし、一部のガスケットなどの製品には猶予措置があり、工事対象によっては別途確認が必要です。
また、事前調査の結果報告や有資格者による調査など、関連する法令も段階的に改正されています。
この記事では、アスベストの使用規制から事前調査に関する法令改正まで、これまでの流れを年表で解説します。
この記事でわかること
建てた年(新築工事の着工日)で変わる、事前調査の進め方
アスベストの製造・使用などが原則禁止、全面禁止になった年月日と、禁止までの流れ
2026年の改正まで含めた、事前調査・報告・有資格者による調査の義務化の年表
アスベストは、2006年9月1日に重量0.1%超を含む製品の製造・使用などが原則禁止となり、2012年3月1日に猶予が撤廃されて全面禁止になりました。
建物の建築年から、必要な対応を確かめたい段階でも、まずは小田原鉱石にお問い合わせください。
アスベストはいつから禁止?2006年9月に原則禁止、2012年3月に全面禁止
アスベストの使用規制で重要なのは、2006年9月1日と2012年3月1日の2つの日付です。
2006年9月1日、アスベストを重量の0.1%を超えて含む製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が、原則として禁止されました。ただし、代替製品がなかったガスケットなどの一部の製品は、例外的に禁止が猶予されました。
その後、猶予対象の製品も段階的に禁止され、2012年3月1日に最後の対象品目が禁止されたことで、全面禁止となりました。
時期 | 内容 |
|---|---|
2006年9月1日 | 重量0.1%超を含む製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用を原則禁止。一部の品目は猶予 |
2012年3月1日 | 猶予されていた最後の品目が禁止され、全面禁止に |

禁止までの流れ|1975年から2012年までの年表
アスベストの使用規制は、一度にすべてが決まったわけではありません。使えるアスベストの種類や含有率、対象となる製品が、段階的に広がってきました。
年 | 内容 |
|---|---|
1975年 | アスベストを重量5%超含む吹付け作業を原則禁止 |
1995年 | アスベストを重量1%超含む吹付け作業を原則禁止。クロシドライト(青石綿)・アモサイト(茶石綿)の製造・使用などを禁止 |
2004年10月1日 | アスベストを重量1%超含む主な建材・摩擦材・接着剤の製造などを禁止 |
2006年9月1日 | 重量0.1%超を含むすべての物の製造・輸入・譲渡・提供・使用を原則禁止 |
2012年3月1日 | 猶予されていた品目も禁止され、全面禁止に |
1975年の規制は、吹付け作業が対象でした。含有率の基準も、5%超、1%超、0.1%超と、少しずつ厳しくなっています。
2004年には、アスベストを重量1%超含む主な建材・摩擦材・接着剤の製造などが禁止されました。2006年には、禁止の対象が、アスベストを重量0.1%超含むすべての物へ原則として広がっています。
このように、アスベストの規制は段階的に強化されてきました。そのため、過去の調査では「含有なし」と判定された建材でも、当時の分析基準が現在と異なる場合、現在の基準ではアスベスト含有と判定されることがあります。
過去に調査を実施しているからといって、必ずしも安心できるわけではありません。調査結果だけでなく、いつ調査・分析が行われたのか、当時の基準が現在の基準に適合しているかも確認することが重要です。

2006年に残った猶予と、2012年に終わった経緯
2006年の原則禁止では、代替製品の確保に時間が必要だった一部の製品について、使用などの禁止が猶予されました。厚生労働省の資料では、ジョイントシートガスケットなどが挙げられています。
猶予対象の製品も段階的に禁止され、2011年3月1日に一部の品目が、2012年3月1日に最後の品目が禁止されました。最後まで猶予されていたのは、化学工業の施設で使われる直径1,500mm以上のガスケットなどです。
製造や使用などが禁止される前に、すでに設備に取り付けられていた製品は、そのまま使い続けることが認められていました。
そのため、アスベストの使用が全面禁止された2012年3月以降も、既存の設備や建物にはアスベストを含む製品が残っている場合があります。

禁止されても建物には残る|禁止の対象と既存の建材
アスベストの使用禁止は、禁止前に建物や設備に使用された建材を、すべて撤去することまで求めるものではありません。そのため、現在もアスベスト含有建材が残っている可能性があります。
こうした建材によるばく露を防ぐため、建物の解体や改修工事を行う際には、工事前にアスベストの事前調査を実施する必要があります。
また、事業者が労働者を就業させる建築物で、吹付け石綿などが劣化し、労働者が石綿にばく露するおそれがある場合は、石綿障害予防規則第10条に基づき、除去・封じ込め・囲い込みなどの措置が必要となる点にも注意しましょう。
区分 | 内容 |
|---|---|
禁止されたこと | アスベストを含む製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用 |
禁止の対象ではないこと | 禁止前に建物・設備へ使われ、現に残っているもの(猶予が終わった品目のうち施行時に使用中のものは経過措置あり) |

アスベスト調査の義務化はいつから?1995年から2026年までの年表
「調査の義務化」は、2021年や2023年のことだと思われがちです。しかし、事前調査の義務づけは1995年に始まっていました。その後、調査の方法・記録・報告・調査を担当するものが、段階的に厳しくなってきました。
年 | 内容 | 根拠となる法令 |
|---|---|---|
1995年 | 事前調査を義務づけ | 特定化学物質等障害予防規則 |
2005年7月1日 | 石綿障害予防規則の施行。事前調査でアスベストの使用の有無が不明な場合は、原則として分析を義務づけ | 石綿障害予防規則 |
2009年 | 事前調査結果の概要の掲示を義務づけ | 石綿障害予防規則 |
2014年6月1日 | 事前調査・掲示・発注者への書面説明。届出の義務者を施工者から発注者へ変更 | 大気汚染防止法 |
2021年4月1日 | 調査方法の明確化、記録の作成・保存、規制対象を全ての石綿含有建材へ拡大 | 大気汚染防止法・石綿障害予防規則 |
2022年4月1日 | 一定規模以上の工事の事前調査結果の報告 | 大気汚染防止法・石綿障害予防規則 |
2023年10月1日 | 建築物・鋼製船舶の事前調査を有資格者が行う | 石綿障害予防規則 |
2026年1月1日 | 一定の工作物の事前調査を有資格者が行う(同日以降に着工する工事から) | 石綿障害予防規則 |
2005年6月には、アスベストを扱っていた工場の周辺で、アスベストによる疾病が出ていた事案が公表されました。2005年の石綿障害予防規則の制定や、2006年の原則禁止は、この前後の動きです。

2021年〜2023年に変わったこと|調査の進め方・報告・担当者
2021年から2023年にかけて、アスベストの事前調査に関するルールが段階的に改正されました。調査方法の明確化、結果報告の義務化、調査者の資格要件という3つの変更点を押さえておきましょう。
2021年4月からは、事前調査の方法が明確化され、設計図書などを確認する書面調査と、現地で建材を確認する目視調査の両方を行い、結果を記録・保存することになりました。
また、大気汚染防止法では、それまで規制対象外だった石綿含有成形板などの「レベル3建材」も含め、すべての石綿含有建材に規制対象が拡大されました。背景には、レベル3建材も、不適切に除去するとアスベストが飛散するおそれがあることが挙げられます。
さらに、吹付け石綿などの除去作業で、必要な隔離措置を行わない場合などに対する直接罰も創設され、アスベストの飛散防止対策が強化されました。
2022年4月からは、一定規模以上の工事で、事前調査結果の報告が義務化されました。
報告が必要となるのは、建築物の解体工事では対象部分の床面積の合計が80㎡以上、改造・補修工事では請負代金の合計が税込100万円以上の場合です。アスベストが含まれていない場合も、報告の対象となります。
ここで注意したいのは、報告基準に満たない工事でも、事前調査は必要だという点です。 報告義務がないことを理由に、事前調査も不要だと誤解されることがありますが、解体・改修工事では、規模にかかわらず原則として事前調査を実施しなければなりません。
2023年10月1日以降に着工する工事からは、建築物と鋼製の船舶の事前調査を、原則として有資格者が行うことになりました。
建築物の調査を行えるのは、「特定建築物石綿含有建材調査者」「一般建築物石綿含有建材調査者」「一戸建て等石綿含有建材調査者」などです。一戸建て等石綿含有建材調査者は、調査できる建物の範囲が限られます。また、鋼製の船舶については、船舶石綿含有資材調査者など、所定の要件を満たす者が調査を行う必要があります。
(ただし、設計図書などの書面で石綿含有建材の有無を確認でき、書面による確認のみで事前調査を完了できる場合は、有資格者による調査の対象外です。)

2026年1月から|一定の工作物の事前調査にも資格要件
2023年10月に建築物などで始まった有資格者による事前調査は、2026年1月1日以降に着工する工事から、一定の工作物にも拡大されました。
工作物とは、建築物とは別の設備や構造物を指します。例えば、工場やプラントの反応槽、加熱炉、ボイラー、圧力容器、配管、発電設備、変電設備、煙突などが該当します。
ただし、すべての工作物が一律に資格要件の対象となるわけではありません。対象となるのは、厚生労働大臣が定める特定工作物の解体・改修工事のほか、特定工作物以外でも、石綿を含むおそれのある塗料やシーリング材などを除去する作業です。必要な資格は、工作物の種類や作業内容によって異なります。詳しくは、資格の違いについて解説した記事をご覧ください。
対象 | 有資格者による事前調査の義務 |
|---|---|
建築物・鋼製の船舶 | 2023年10月1日以降に着工する工事から |
一定の工作物 | 2026年1月1日以降に着工する工事から |

着工日から確認すること|2006年9月以降の書面確認と例外・年代が不明なとき
事前調査を行う際はまず、その建物の着工日を確認することが重要です。注意点は竣工日ではなく、着工日であることです。
新築工事の着工日 | 事前調査の進め方 |
|---|---|
2006年9月1日以降と書面で確認できる | 着工日の書面確認で、事前調査を終えられる。一部の業種の設備は、設置日も基準日以降かを確認する(ただし、ガスケットなどの猶予措置対象製品は、この基準では判断しない) |
2006年8月31日以前 | 原則として書面調査と目視調査。アスベストの有無が分からない建材は、分析するか、含有しているものとみなして措置を講じる |
着工日を書面で確認できない | 資料を探し、確認できなければ、原則として書面調査と目視調査から始める |
2006年9月1日以降に新築工事が着工されたことを設計図書や建築確認申請書などで確認できれば、書面による確認のみで事前調査を完了できます。それ以外の建築物では、原則として書面調査に加え、現地での目視調査が必要です。
また、事前調査の結果は記録を作成し、調査終了日から3年間保存する必要があります。さらに、作業場所に記録の写しを備え付け、調査結果の概要を労働者が見やすい場所に掲示しなければなりません。
前述した通り、一部の設備ではアスベスト含有製品の使用禁止に猶予措置があったため、建物の着工日だけでなく、ガスケットやグランドパッキンの設置日も確認する必要があります。
対象となる設備と設置日の基準は、次のとおりです。
業種・設備 | 設置日の基準 |
|---|---|
非鉄金属製造業(ガスケット) | 2007年10月1日以降 |
鉄鋼業(ガスケット・グランドパッキン) | 2009年4月1日以降 |
化学工業(グランドパッキン) | 2011年3月1日以降 |
化学工業(ガスケット) | 2012年3月1日以降 |
着工日が2006年9月以降でも、これらの設備は設置日が基準日以降かどうかを確認します。基準日以降だと書面で確認できれば、事前調査は書面調査のみで終えることができます。
着工日や設置日が分からない場合は、設計図書・竣工図、改修工事の履歴、設備台帳、保守点検の記録などを確認します。設備を更新している場合は、更新した部分の設置日が分かる資料も調べましょう。書面で基準を満たしていることを確認できない場合は、通常の事前調査が必要です。

アスベストの禁止年代・調査義務化に関するよくある質問
アスベストの製造や使用が全面禁止になったのはいつですか
一般的な建築物のアスベスト対策では、2006年9月1日が重要な基準日です。この日から、アスベストを重量の0.1%を超えて含む製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が、原則として禁止されました。
そのため、建物の事前調査では、新築工事の着工日が2006年9月1日以降かどうかを書面で確認することが重要です。
ただし、一部の業種で使用されるガスケットやグランドパッキンなどには、禁止の猶予措置が設けられていたため、建物の着工日だけでは判断できない場合があります。対象となる設備では、製品の設置日も確認する必要があります。
2006年9月以降に建てた建物は、アスベストの事前調査をどう進めますか
新築工事の着工日が2006年9月1日以降だと書面で確認できれば、その確認で事前調査を終えられます。着工日を法定の条件どおりに書面で確認して事前調査を終える場合は、調査者の資格要件の対象外です。
ただし、基準は竣工年ではなく着工日です。増築や改修で着工日が違う部分や、業種別にガスケット・グランドパッキンの設置日の基準がある設備は、別に確認が必要です。調査結果の記録は必要で、報告の対象となる工事では報告も必要です。
着工日を書面で確認できないときや、判断に迷うときは、小田原鉱石にご相談ください。
アスベストの事前調査はいつから義務ですか
1995年に義務づけられました。2005年には、使用の有無が不明な場合の原則としての分析、2009年には結果の概要の掲示が加わっています。
2021年以降は、調査方法の明確化、報告、有資格者による調査と、段階的に厳しくなりました。工事の規模にかかわらず、解体改修工事の前には事前調査が必要です。
禁止前に使われた建材は、そのまま使っていてよいですか
アスベストの使用が禁止されても、すでに建物や設備に使用されているアスベスト含有建材を、一律に取り換える義務が生じるわけではありません。そのため、現在も多くの建物にアスベスト含有建材が残っています。
ただし、吹付け石綿など、劣化によってアスベストが飛散するおそれのある建材には注意が必要です。労働者が就業する建築物で、劣化などにより労働者が石綿にばく露するおそれがある場合は、除去・封じ込め・囲い込みなどの措置が求められます。
アスベストの有無が気になる場合は、小田原鉱石にご相談ください。
2026年1月から何が変わりましたか
2026年1月1日以降に着工する工事から、一部の特定工作物などの解体・改修で、工作物石綿事前調査者による事前調査が必要になりました。
建築物は2023年10月から始まっており、工作物はその後に広がった形です。対象物が資格の要件に該当するかどうかは、小田原鉱石にご相談いただければ一緒に確認します。
建物の着工日はどうやって調べればいいですか
建物の着工日は、建築確認申請書や設計図書、工事記録などで確認するのが一般的です。書類が手元にない場合は、施工会社や建物の管理会社に問い合わせてみましょう。
2006年9月1日以降に着工したことを書面で確認できない場合は、原則として書面調査と目視調査を行う必要があります。
わからない場合はまず小田原鉱石にご相談ください。
まとめ:アスベストの事前調査で確認すべき4つのポイント
アスベストを含む製品は段階的に使用が禁止されましたが、禁止前に使用された建材や設備には、現在もアスベストが残っています。建物の解体・改修工事を行う際は、次の4点を確認しましょう。
建物の着工日を確認する
2006年9月1日以降に新築工事が着工されたことを書面で確認できれば、原則として書面確認のみで事前調査を完了できます。ただし、ガスケットなどの一部製品には別の基準があるため、注意が必要です。
事前調査を実施する
着工日の書面確認だけで調査を完了できる場合を除き、書面調査と目視調査を行います。事前調査は建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による調査が必要です。また一部の特定の工作物については、工作物石綿事前調査者による調査が必要となります。
調査結果を報告する
建築物の解体工事では対象部分の床面積の合計が80㎡以上、改造・補修工事では請負代金の合計が税込100万円以上の場合、事前調査結果の報告が必要です。アスベストが含まれていない場合も報告の対象となります。
調査結果を掲示・保存する
調査結果の概要を労働者が見やすい場所に掲示し、記録の写しを作業場所に備え付けます。また、調査結果の記録は3年間保存する必要があります。
アスベストの事前調査では、着工日の確認だけでなく、調査方法や資格要件、報告・記録のルールを把握しておくことが重要です。工事の内容に応じて必要な対応を確認し、法令に沿って調査を進めましょう。
「いつ建てた建物か分からない」「うちの建物や設備は、調査の対象になるのか分からない」。そのような段階でも、小田原にご相談ください!