
この記事を書いた人

髙橋 淳
(たかはし じゅん)
小田原鉱石株式会社 代表取締役
2015年にアスベスト調査・分析を専門とする小田原鉱石を設立し、代表を務める。行政施設、工場、ホテルなど幅広い建物の調査実績を重ねてきた。関連団体セミナーの登壇経験も多数あり、現場に近い分析会社として日々のアスベスト課題解決に取り組んでいる。
「アスベストのレベルが違うと、工事で必要な対応はどう変わるのだろう?」
調査結果を見て、そう疑問に思ったことはありませんか?
アスベスト建材のレベルの区分は、建材のアスベスト含有量ではなく、建材の種類や飛散性(粉じんの発生しやすさ)に基づいています。レベルによって、除去時の隔離措置や作業前の届出の要否、廃棄物の区分などが異なります。また、同じレベルでも、建材の種類や作業方法によって必要な措置が変わる場合があります。
レベルや建材の種類によって適切な工事を行うことが必要になります。
この記事でわかること
レベル1・2・3で変わる、除去時の措置・届出・廃棄物の扱い
同じレベルでも、作業方法で必要な措置が変わる例
レベルの判定を誤らないための調査の進め方
アスベスト建材のレベルは、アスベストの含有率ではなく、建材の種類と飛散性(粉じんの発生しやすさ)で決まる区分です。必要な措置は、作業方法によっても変わります。
建材のレベルや、工事に必要な対応がわからない場合でも、まずは小田原鉱石にお問い合わせください。
アスベストのレベル1・2・3は、含有率ではなく発じん性で分けられている
アスベストのレベル1・2・3は、建材の種類や、除去作業における飛散性(粉じんの発生しやすさ)をもとにした区分です。アスベストの含有率によってレベルが決まるわけではありません。
アスベストの含有率は、その建材がアスベスト含有建材に該当するかどうかを判断する基準です。日本では、アスベストの含有率が重量の0.1%を超える建材を、アスベスト含有建材として扱います。
また、同じレベルの建材でも、種類や作業方法によって必要な飛散防止措置は異なります。たとえば、けい酸カルシウム板第1種は、原形のまま取り外す場合も切断して除去する場合もレベル3ですが、作業方法によっては隔離養生などの措置が必要になります。
なお、「レベル1・2・3」という呼び方は、厚生労働省の資料などで用いられている区分です。法令上、これらの名称で直接分類が定められているわけではありません。
それぞれのレベルの特徴を見ていきましょう。
区分 | 代表的な建材 | 飛散のしやすさ | 除去時の主な対応 |
|---|---|---|---|
レベル1 | 吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール | 著しく高い | 負圧隔離(石綿障害予防規則第6条)。除去後の湿潤化 |
レベル2 | 保温材、断熱材、耐火被覆材 | 高い | 切断等を伴うときは負圧隔離。伴わないときは立入禁止と表示(同第7条) |
レベル3 | 成形板(スレート、ビニル床タイル等) | 比較的低い | 切断等以外の方法で除去(同第6条の2)。粉じんの発散防止措置 |

飛散しやすい順にレベル1,2,3となっています。
建材の種類についてはアスベスト建材の見分け方で解説していますので詳細はそちらを確認ください。
必要な飛散防止措置はレベルだけでは判断できません。同じレベル3の建材でも、切断や電動工具を使った除去では、隔離などの措置が必要になる場合があります。
レベル1の建材は吹付け石綿などで、飛散性が最も高い
レベル1は、アスベストを含む吹付け材です。吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール(乾式・湿式)、石綿含有吹付けバーミキュライト、石綿含有吹付けパーライトなどが上げられます。
鉄骨の耐火、機械室ボイラー室の吸音、結露防止の目的で使用されることが多いです。

吹付材などのレベル1建材は劣化しやすく飛散性が最も高い建材です。アスベストの繊維は髪の毛の約5,000分の1の細さで、空気中に飛散すると長時間漂うことがあります。そのため、レベル1の除去作業では、石綿の飛散を防ぐために作業場所を隔離し、厳重な飛散防止措置を講じる必要があります。
具体的には、ろ過集じん方式の集じん・排気装置を設置し、前室・洗身室・更衣室を設けます。また、作業場所と前室を負圧に保ち、除去する部分を湿潤化します。隔離は、石綿等に関する知識を持つ者が除去の完了を確認するまで解除できません(石綿障害予防規則第6条)。
このように、レベル1の除去作業では、厳重な飛散防止措置が求められます。
レベル2の建材は保温材・断熱材・耐火被覆材で、除去時に飛散しやすい
レベル2は、保温材、断熱材、耐火被覆材です。保温材には、石綿保温材、けいそう土保温材、パーライト保温材があります。石綿含有けい酸カルシウム保温材と、不定形保温材(水練り保温材)も含まれます。
断熱材は屋根用折版裏の石綿断熱材と煙突用の石綿断熱材、耐火被覆材は耐火被覆板とけい酸カルシウム板第2種が挙げられます。

レベル2の除去では、建材の種類や作業方法に応じた飛散防止措置が必要です。
石綿含有保温材等のうち、切断等により石綿等の粉じんが著しく発散するおそれがあるものを除去する場合は、作業場所の隔離や集じん・排気装置の設置、負圧の維持など、レベル1と同様の措置が求められます(石綿障害予防規則第6条)。
一方、配管の保温材などを除去する際には、グローブバッグ工法が用いられることもあります。グローブバッグで対象部分を密閉し、その内部で除去作業を行うことで、石綿の飛散を防ぎます。ただし、適用条件や必要な措置を確認したうえで施工する必要があります。
また、切断等を伴わない作業でも、作業場所への立入禁止措置や表示が必要です(同規則第7条)。
レベル2の建材は、配管など複数の箇所に使用されていることがあり、目視で確認しにくい場所に施工されている場合もあります。そのため、事前調査では、対象となる建材を漏れなく確認することが重要です。
レベル3の建材は成形板などで、飛散しにくくても対応は必要
レベル3には、アスベストを含む成形板や仕上塗材などが該当します。代表的な建材には、石綿スレート、住宅屋根用化粧スレート、窯業系サイディング、押出成形セメント板、石綿含有仕上塗材などがあります。そのほか、パルプセメント板、ビニル床タイル、けい酸カルシウム板第1種、ロックウール吸音天井板なども含まれます。屋根や外壁、天井、床など、幅広い場所に使用されています。

なお、レベル3の建材でも、けい酸カルシウム板第1種や石綿含有仕上塗材は、ほかの建材とは除去方法や必要な措置が異なります。次に、それぞれの除去方法と注意点を解説します。
電動工具や切断で除去するときは、レベル3の建材でも隔離が必要になる
同じレベル3の建材でも、種類や除去方法によって必要な飛散防止措置が異なります。
たとえば、けい酸カルシウム板第1種を切断等の方法で除去する場合は、作業場所をビニルシートなどで隔離し、負圧に保つ措置は不要ですが、作業中の常時湿潤化や、除じん性能を有する電動工具の使用などが必要になります。(石綿障害予防規則第6条の2第3項)。
また、石綿含有仕上塗材を電動工具で除去する場合にも、同様に隔離や湿潤化などの措置が求められます(同規則第6条の3)。
その他のレベル3建材は、原則として切断等を伴わない、手ばらしで撤去することが求められます。やむを得ず切断等を行う場合は、作業中に建材を湿潤な状態に保つほか、除じん性能を有する電動工具を使用するなど、粉じんの飛散を防ぐ措置が必要です。

このように、レベル3であっても、建材の種類や作業方法によって必要な措置は変わります。工事の発注者は、どの建材をどのような方法で除去するのか、調査者や施工者と事前に共有しておくことが重要です。
アスベストのレベルで変わる届出と廃棄物の扱い
届出が必要になるのは、レベル1・2にあたる建材の除去等です。届出の対象は、吹付け石綿と、アスベストを含有する断熱材・保温材・耐火被覆材です(大気汚染防止法施行令第10条の2)。
この作業を伴う工事は、作業開始の14日前までに、発注者または自主施工者が都道府県知事(政令で定める市では市長)へ届け出ます(大気汚染防止法第18条の17)。
レベル3は、この届出の対象外です。ただし、アスベストを含有する建築材料はすべて特定建築材料で、作業基準(同第18条の14)の対象になります。届出が不要でも、作業基準は適用されます。
「届出」と呼ばれる手続きは複数あり、根拠も届け先も異なります。
手続き | 根拠 | 届け先 | 対象 |
|---|---|---|---|
特定粉じん排出等作業の実施届出 | 大気汚染防止法第18条の17 | 都道府県知事 | 吹付け石綿、石綿含有の断熱材・保温材・耐火被覆材(レベル1・2)の除去等。作業開始の14日前まで |
石綿障害予防規則の届書 | 石綿障害予防規則第5条 | 所轄労働基準監督署長 | 吹付け石綿等の除去等。粉じんを著しく発散するおそれのある石綿含有保温材等の除去等 |
事前調査結果の報告 | 石綿障害予防規則第4条の2、大気汚染防止法第18条の15第6項 | 所轄労働基準監督署長、都道府県知事等 | 一定規模以上の解体・改修工事。アスベストの有無を問わない |

廃棄物の区分も、建材の種類で決まります。吹付け材、保温材、断熱材、耐火被覆材(けい酸カルシウム板第2種を含む)などのレベル1,2建材を除去したものは廃石綿等で、特別管理産業廃棄物に指定されています。成形板などのレベル3建材は、石綿含有産業廃棄物として扱います(環境省『石綿含有廃棄物等処理マニュアル』)。
事前調査結果の報告が必要な工事の範囲は、別の記事で詳しく説明します。
アスベストのレベルを誤判定した公開事例から見る調査の落とし穴
兵庫県宍粟市の市民センターの解体工事で、アスベストの事前調査における判定ミスと調査漏れが報じられました。
報道によると、2024年に行われた事前調査では、大ホールなどの天井に吹き付けられた「ゾノライト吹付け」(539㎡)がレベル3と判定されていました。しかし、正しくはレベル1に該当する建材でした。分析結果は、クリソタイル0.4%、トレモライト0.2%と報じられています。レベルは含有率の大小ではなく、建材の種類などに基づいて判断する必要があります。

また、機械室の煙突断熱材や、消火栓配管などの保温材55か所も調査対象から漏れていました。報道では、見落としは58か所以上にのぼり、いずれも目視で確認できる場所だったとされています。
この事例は、建材の種類を正しく判定することに加え、工事の対象範囲を漏れなく調査することの重要性を示しています。事前調査では、設計図書などの書面と現場の目視確認を照合し、建材の種類や施工箇所を一つずつ確認する必要があります。
(出典:アジアプレス・ネットワーク「兵庫県宍粟市でアスベスト50カ所超見落とし」2025年4月22日、神戸新聞NEXT 2025年3月25日)
https://www.asiapress.org/apn/2025/04/japan/asbestos-183/
アスベストのレベルを正しく判定するための調査と分析の進め方
アスベストの事前調査は、設計図書などの書面調査と、現地での目視調査から始めます。それでもアスベストの有無を判断できない場合は、分析調査を行うか、アスベストが使用されているものとみなして必要な措置を講じます(石綿障害予防規則第3条第5項ただし書)。
みなしを選択した場合も、事前調査や調査結果の記録、作業基準の遵守は必要です。また、報告対象となる工事では、事前調査結果の報告も省略できません。
設計図書に建材名が記載されていても、実際の建物に同じ建材が使用されているとは限りません。書面と現地の状況を照合し、工事対象の建材を漏れなく確認することが重要です。また、アスベストの有無を確認することと、レベルを判定することは別です。レベルは、含有率ではなく、建材の種類などに基づいて判断します。

事前調査を行う資格者は、調査対象が建築物か工作物かによって異なります。詳しくは「アスベストの資格の違い」で解説しています。
調査や除去方法について相談する際は、次の資料を用意しておくと、必要な措置を具体的に確認しやすくなります。
建物の図面や設計図書
過去の調査報告書や改修工事の記録
予定している作業内容や、電動工具の使用の有無
建材の種類だけでなく、どのような方法で除去するかを把握することも、必要な飛散防止措置を判断するうえで重要です。
アスベストのレベルに関するよくある質問
レベル3の建材なら、特別な対応はいらないのですか?
レベル3建材でも建材に適した除去工事は必要です。
レベル3でもアスベストを含む建材であれば、切断等以外の方法での取り外しと、粉じんの発散を防ぐ措置が必要です(石綿障害予防規則第6条の2・第13条)。切断等をする場合は、隔離と湿潤化が必要になる建材もあります。
工事の方法が決まっている段階で、必要な対応を一緒に確認します。
レベルの数字が大きいほど、アスベストの含有率は低いのですか?
含有率とレベルは関係がありません。
レベルは、建材の種類と発じん性(粉じんの発生しやすさ)で決まる区分です。実際に必要な措置は、作業方法によっても変わります。
判断に迷う場合は試料採取からご相談ください。
レベル3の建材だけの工事でも、事前調査の報告は必要ですか?
事前調査結果の報告が必要かどうかは、アスベストのレベルではなく、工事の種類や規模によって決まります。
報告が必要なのは、次のいずれかに該当する工事です。
建築物の解体工事: 解体部分の床面積の合計が80㎡以上
建築物の改修工事: 請負金額が税込100万円以上
特定の工作物の解体・改修工事: 請負金額が税込100万円以上
請負金額には材料費や消費税も含まれます。報告は、アスベストが含まれていない場合も必要です。
なお、上記の規模に満たない工事でも、事前調査自体は必要です。 調査結果の報告義務がないことと、事前調査が不要であることは異なります。
工事の種類や規模によって判断に迷う場合は、工事内容をもとにご相談ください。
煙突や配管などの工作物にも、レベルの考え方は当てはまりますか?
当てはまります。
石綿障害予防規則の除去等の措置は、建築物のほか、工作物も対象です。煙突用の断熱材や、配管の保温材は、レベル2の建材に挙げられています。
対象の設備の図面があれば、使われている建材から確認します。
判断に迷う建材は、どう扱えばよいですか?
分析調査でアスベストの有無を確認するか、アスベストが使用されているものとみなして対応します。
アスベスト含有みなしの判断をしたとしても、事前調査、記録、作業基準の遵守は省略できません。報告が必要な工事では、報告も省略できません。
どちらが適しているかは、建材の量や工事の内容で変わります。相談のときに一緒に整理します。
まとめ
アスベストのレベル1・2・3は、含有率ではなく、建材の種類や飛散性(粉じんの発生しやすさ)に基づく区分です。レベル1は吹付け材、レベル2は保温材・断熱材・耐火被覆材など、レベル3は成形板や仕上塗材などが該当します。
レベルによって除去時に必要な飛散防止措置は異なりますが、同じレベルでも建材の種類や作業方法によって必要な措置が変わります。レベル3でも、けい酸カルシウム板第1種の切断や、石綿含有仕上塗材の電動工具による除去などでは、隔離措置が必要になる場合があります。
また、大気汚染防止法に基づき、レベル1・2に該当する建材の除去等を行う場合は、原則として作業開始の14日前までに「特定粉じん排出等作業実施届出書」を提出する必要があります。
「使用されている建材のレベルが分からない」「予定している工事に必要な措置を確認したい」といった場合は、小田原鉱石にご相談ください。図面や予定している作業内容が分かる資料をもとに、建材の種類や作業方法に応じた確認をお手伝いします。