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2026/10/26

工作物

建物の維持管理に潜むアスベストリスク|従業員を守るために管理者がすべきこと

この記事を書いた人

髙橋 淳

髙橋 淳

(たかはし じゅん)

小田原鉱石株式会社 代表取締役

2015年にアスベスト調査・分析を専門とする小田原鉱石を設立し、代表を務める。行政施設、工場、ホテルなど幅広い建物の調査実績を重ねてきた。関連団体セミナーの登壇経験も多数あり、現場に近い分析会社として日々のアスベスト課題解決に取り組んでいる。

古い建物の解体や改修が話題になるたびに、「アスベスト」という言葉を耳にします。しかし、アスベスト建材は解体現場だけの問題ではありません。今も現役で使われている多くの建物に、アスベスト建材がそのまま残っています。

その中には、飛散性が高い「レベル1」「レベル2」のアスベスト建材が、劣化した状態で放置されているケースもあります。そこで働く従業員が知らないうちに石綿を吸い込むリスクは、建物を維持管理する事業者にとって見過ごせない問題です。

この記事でわかること

  • 建物を維持管理する事業者が、従業員に対して負っている責任

  • 実際に裁判で争われた、企業責任の考え方

  • アスベスト建材の使用状況を、どう確認するか

  • 劣化状況に応じて、対応をどう分けるか

建物を維持管理する事業者には、そこで働く従業員をアスベストの健康被害から守る義務があります。

マンションの大規模修繕を予定している場合は、マンション大規模修繕のアスベスト調査をご覧ください。

工場やプラントの改修工事を予定している場合は、工場・プラントのアスベスト調査をご覧ください。

特定工作物や有資格者の資格区分については、工作物石綿事前調査者についてで詳しく解説しています。

管理する建物にアスベスト建材が使われているかどうか、判断に迷う段階でもまずは小田原鉱石にお問い合わせください。

→ アスベストの使用状況調査を相談する

建物を維持管理する事業者が抱えるリスク

設備管理者・清掃スタッフ・保守担当者を雇用している施設で、建材が劣化して粉じんが飛散すると日常業務でばく露するおそれがあることを示す図

ホテル・商業施設・工場・賃貸ビル――こうした建物を運営・管理する事業者は、多くの場合そこで働く従業員(設備管理者・清掃スタッフ・保守担当者など)を雇用しています。

建材が損傷・劣化し、粉じんが飛散する状態のまま適切な対策が取られないと、日常業務の中で従業員が知らずに石綿にばく露し続けることになりかねません。

この問題は、実際に裁判でも争われています。

実際にあった判例:ホテル従業員の中皮腫と企業責任

提訴、一審は請求が退けられ、二審で責任が認められたという判例の経過を示す図。争点の一つは危険性を予見でき対策を取ることができたかどうか

あるホテルでボイラー等の運転・保守業務を担当していた従業員が、悪性胸膜中皮腫を発症し亡くなりました。遺族は、雇用主であるホテル運営会社がアスベストの吸引防止など安全配慮義務を怠ったとして、損害賠償を求めて提訴しました。

一審では請求が退けられましたが、二審で判決が覆り、ホテル運営会社側の責任が認められています。争点の一つとなったのは、危険性を予見でき、対策を取ることができたかどうかでした。

この判例は、建物を維持管理する事業者に、そこで働く従業員をアスベストによる健康被害から守る義務があることを示す一例です。

施設管理事業者が今すぐ取るべき対策

施設管理事業者が取るべき対策の2本柱。1.建材の使用状況を確認する 2.劣化状況に応じて対応を分ける、を示す図

では、具体的に何をすればよいのでしょうか。ポイントは大きく2つです。

1. 建物のアスベスト建材の使用状況を確認する

2006年9月以降に着工した建物は原則としてアスベストの使用はなく、それより前に着工した建物はレベル1・2の使用有無と劣化の程度を確認することを示す図。設備の設置・移設時期や増改築部分の着工時期も確認する

まず、自社が管理する建物にアスベスト建材が使われているかどうかを把握することが出発点です。

2006年9月以降に着工した建物は、石綿含有建材の製造・使用が規制された後のものなので、原則としてアスベストの使用はないとされています。それより前に着工した建物は、飛散性の高い「レベル1」「レベル2」の建材について、使用の有無と劣化の程度を確認する必要があります。

建物の着工時期と設備の設置・更新時期

この2006年9月1日という境界は、解体・改修工事の際の事前調査で使う基準です。維持管理の場面でそのまま使う際には、注意が必要です。

建物本体は新しくても、後から設置・移設した設備や、増改築した部分には別の着工時期が関わることがあります。「建物が新しいから、設備を含めてすべて石綿なし」とは言い切れません。

ガスケットなど一部の接合部材は、業種ごとに禁止時期が段階的に適用され、最も遅いものは2012年3月1日まで猶予がありました。改修や増築が複数回に分かれている建物では、部位ごとに着工時期が異なる場合があります。

アスベスト建材の主な使用箇所

建物側と設備側で、確認したい部位は次のように分けて考えると整理できます。

建物側(天井・壁、屋根・外壁、配管)と設備側(ボイラー・熱源機器、電気設備)に分けて、アスベスト建材の代表的な確認箇所の位置を示す図

確認する場所

建材が使われやすい部位

管理上の着眼点

建物側:天井・壁(機械室・ボイラー室等)

吹付け材、保温材

劣化により表面が毛羽立つ・垂れ下がる等の変化がないか

建物側:屋根・外壁

吹付け材(軒天等)

破損・剥落の有無

建物側:給排水・空調等の配管

配管の保温材

被覆の破れ、更新履歴の有無

設備側:ボイラー・熱源機器

保温材、耐火被覆材

点検口・接続部周辺の劣化

設備側:電気設備(キュービクル等)

電気絶縁材等

変電設備に該当する場合、解体・改修時の事前調査に工作物石綿事前調査者の資格が必要になることがある

掲載している組み合わせは代表的なものであり、これ以外の部位で確認が必要になる場合もあります。同じ建物でも、機械室とオフィスフロアでは、確認したい建材が大きく違います。部位ごとに使われている建材が違う、という前提で確認することが大切です。

図面・調査報告書で確認すること

すでに調査報告書がある場合でも、「報告書がある」だけで安心はできません。確認したいのは、調査した範囲と、対象外だった部分です。過去の改修で交換された部分と、今回確認したい部分が同じとは限らないためです。機械室やボイラー室のように限られた人しか出入りしない場所は、資料が更新されていないことがあります。

図面や報告書が見つからないことや、設備のメーカーが分からないことも起こり得ます。そのようなときは、建築確認申請書の写し・過去の改修工事の契約書や仕様書・設備の銘板や型式表示・前任の管理担当者への聞き取り記録が手がかりになります。

これらは調査の出発点であり、これだけで含有の有無を確定できるものではありません。

2. 劣化状況に応じて対応を分ける

劣化が進んでいる場合は撤去工事、劣化が軽微で粉じんの発散・ばく露のおそれが低いと判断できる場合は目視での定期点検と環境測定(当社の提案頻度は年1回)を行うという、維持管理の目安を示す図

調査の結果をもとに、劣化の程度に応じて対応を分けます。小田原鉱石がご案内する目安は次のとおりです。

  • 劣化が進んでいる場合 → 撤去工事を実施し、リスクの根本を取り除く

  • 劣化が軽微で、粉じんの発散・ばく露のおそれが低いと判断できる場合 → 年に1回の環境測定を行い、空気中の状況を継続的に確認する

損傷・劣化等により粉じんを発散させ、労働者がばく露するおそれがある場合には、除去・封じ込め・囲い込み等の措置が必要です(石綿障害予防規則第10条第1項)。ここでご案内する年1回の環境測定は、建物の維持管理として提案する頻度であり、労働安全衛生法令がすべての建物に一律に義務付けているものではありません。

一度確認して終わりではなく、目視での定期点検と環境測定をセットで運用する体制を作ることが、従業員を守り続けるための現実的な着地点です。

劣化時に必要な措置

石綿障害予防規則第10条第1項は、労働者を就業させる建築物や工作物に吹き付けられた石綿等または張り付けられた石綿含有保温材等について、損傷・劣化等で粉じんを発散させばく露のおそれがあるときの措置義務を定めています。該当するときは、除去・封じ込め・囲い込み等の措置を講じなければなりません。

同条第2項は、その場所に労働者を臨時に就業させる場合に、呼吸用保護具に加え、作業衣または保護衣の使用を求める規定です。

点検・測定結果を管理台帳に残す

点検と記録は、1回で終わらせず続けることが大切です。次のような管理台帳を用意しておくと、担当者が交代しても引継ぎがしやすくなります。

  • 建材の使用箇所と種類:調査結果に基づく一覧

  • 点検日と劣化の状況:目視点検の記録

  • 測定を実施した場合の結果:日付・数値・実施機関

  • 連絡先:調査・分析を依頼した事業者、委託先の管理会社

まずはアスベスト調査から

建物のリストアップ、使用状況の調査、優先順位をつけて着手という3ステップでアスベスト調査を進めることを示す図

法的リスクも、従業員の健康リスクも、出発点は同じです。自社が管理する建物に、アスベスト建材が使われているかどうかを知ること。ここが分からなければ、除去も、測定も、対策の優先順位もつけられません。管理する建物が複数ある場合は、優先順位をつけて着手すると進めやすくなります。

小田原鉱石では、建物のアスベスト使用状況の調査から、劣化診断・除去要否の判断・年次の環境測定まで一貫してサポートしています。まずは自社が管理する建物のリストアップから、一緒に整理していきましょう。

→ アスベストの使用状況調査を相談する

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