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2026/10/26

工作物

マンション大規模修繕のアスベスト調査|対象建材・調査時期・進め方

この記事を書いた人

髙橋 淳

髙橋 淳

(たかはし じゅん)

小田原鉱石株式会社 代表取締役

2015年にアスベスト調査・分析を専門とする小田原鉱石を設立し、代表を務める。行政施設、工場、ホテルなど幅広い建物の調査実績を重ねてきた。関連団体セミナーの登壇経験も多数あり、現場に近い分析会社として日々のアスベスト課題解決に取り組んでいる。

マンションの大規模修繕では、外壁や屋上、共用部の改修に着手する前に、アスベストの事前調査が必要になります。管理会社の修繕担当者や、工事を請け負う施工会社に向けて、着工前に押さえておきたいポイントをお伝えします。

この記事でわかること

  • 大規模修繕でアスベスト事前調査が必要になる理由

  • 着工前に押さえておきたい事前調査の4つの流れ

  • 共用部で調査対象になりやすい建材の具体例

  • 個別の修繕工事やキュービクル更新で確認しておきたいこと

マンションの大規模修繕は、外壁や屋上、共用部の改修に当たるため、築年や工事規模を問わずアスベストの事前調査が義務です。

今回の工事が調査の対象になるかどうか、判断に迷う段階でもまずは小田原鉱石にお問い合わせください。

→ アスベスト事前調査の対象範囲を相談する

マンション大規模改修工事にもアスベスト調査が必要?

事前調査の義務は、築年や工事規模を問わない

マンションの大規模修繕も、外壁や屋根、共用部の改修に当たるため、アスベストの事前調査が必要です(石綿障害予防規則第3条第1項)。「築年数が浅いから」「小規模な工事だから」といった理由で、調査の対象から外れることはありません。着工前に、対象範囲を把握しておきましょう。

新築時の着工日によって、調査の進め方が変わる

新築時の着工日を書面で確認できるかによって、書面調査のみで完了する場合と、書面調査+現地目視調査の両方が必要になる場合の分岐を示す図

事前調査は、書面調査と現地での目視調査を行うのが原則です。

ただし、マンションが新築された際の着工日が2006年9月1日以降であれば、設計図書等の書面で確認するだけで事前調査を終えられます(石綿障害予防規則第3条第3項第3号)。この場合、現地目視調査も有資格者(建築物石綿含有建材調査者等)による実施も不要です(同条第4項)。

着工日を書面で確認できない場合や、増改築で着工時期が異なる部分がある場合は、書面調査と現地目視調査の両方を行います。

ここで見る着工日は、マンションが新築されたときのものです。今回の大規模修繕工事の着工日ではありません。

調査の報告が必要になる工事の規模

事前調査の結果報告は規模にかかわらず必須で、行政への報告は解体作業なら床面積80平方メートル以上、改造・補修作業なら請負代金税込100万円以上の場合に必要になることを示す図

事前調査の結果は発注者へ書面で報告します。加えて、一定規模以上の工事は行政への報告も必要です(大気汚染防止法第18条の15第6項)。

対象は、解体作業を伴う工事は解体対象部分の床面積の合計が80平方メートル以上、改造・補修作業を伴う工事は請負代金の合計が税込100万円以上です。石綿の有無は問いません。報告は原則として石綿事前調査結果報告システムで行います。

マンションの大規模修繕は、壁や柱や床を同時に取り壊す解体作業ではなく、既存の建材に手を加える改修・補修がほとんどです。行政への報告要否は、多くの場合、税込100万円の基準で判定します。

「税込100万円未満だから調査自体が不要」というわけではありません。報告の対象外となる工事でも、事前調査そのものは必要で、調査記録は自社で保存します。

工事前に行うべきアスベスト対策フロー

アスベストが関わる工事には、次のような流れがあります。

事前調査・結果報告届出・工事除去作業・完了確認記録の4ステップを示す作業手順のフロー図

①事前調査(着工前)

工事を開始する前にアスベスト事前調査を行います。

有資格者による書面調査と現地目視調査を行い、対象となる建材のアスベストの有無を調べます。石綿の有無が明らかにならない場合は、試料を採取して分析するか、含有するものとして扱う「みなし」で対応します(石綿障害予防規則第3条第5項)。みなしを選んでも、事前調査の義務そのものは変わりません。

マンションの共用部を調査できるのは「一般」または「特定」の建築物石綿含有建材調査者のみです。「戸建て住宅の調査実績があるから大丈夫」と思われがちですが、専用部分だけを担当する「一戸建て等」の区分では共用部分を調査できません。依頼時に資格の区分を確かめてください。

②結果報告・届出(着工前)

調査結果は、石綿の有無にかかわらず現場に掲示し、発注者へ書面で報告します。「石綿が見つからなければ掲示は不要」ということはありません。

請負代金が税込100万円以上の工事は行政への報告もあわせて必要で(大気汚染防止法第18条の15第6項)、対象外の工事でも調査記録は事前調査を終えた日から3年間保存します(石綿障害予防規則第3条第7項)。

吹付け石綿など飛散性の高い建材を除去する工事では、この報告とは別に、作業開始の14日前までに特定粉じん排出等作業の届出が必要です(発注者または自主施工者が届出人)。自治体独自の届出や周知が必要な場合もあるため、工事所在地の窓口であわせて確認します。

③工事・除去作業(施工中)

石綿を含む建材がある場合は、含有レベルに応じた作業の基準に従い、隔離・湿潤化などの飛散防止措置を講じます。石綿が含まれない場合も、①②で確認した記録・掲示は工事完了まで維持したうえで、通常の改修工事として進めます。

④完了確認・記録(完了後)

石綿を含む廃棄物を適正に処理し、取り残しがないかを確認したうえで作業の記録を作成します。記録は3年間保存し、発注者へ完了を書面で報告します。

調査に着手する時期は、予算と仕様を固める前

アスベストの事前調査は、工事の仕様や見積もり条件を固める前に着手するのが基本です。あとから調査結果で工法が変わると、決まっていた予算や工期の見直しが必要になるためです。

理事会と共有しておきたいことは、次のとおりです。

  • 今回の工事範囲:修繕で手を加える部分についてアスベストの使用状況を把握する

  • 調査結果の使いみち:工法・費用・工程を決める材料になる

  • 着手のタイミング:予算案や見積もり条件を固める前に調査を進めておく

工事を請け負う施工会社は、契約の早い段階で次の2点を把握しておきます。

  • 事前調査の対象範囲:今回の工事で加工・撤去する部分がすべて含まれているか

  • 報告・届出の担当:発注者への報告や行政への届出をどちらが担当するか

居住中のマンションで必要になる調整

マンションの大規模修繕は住民が生活しながら進むため、事前調査でも居住中ならではの調整が必要です。

  • バルコニーへの立ち入り:日程や在宅の要否を事前に伝えておく

  • 試料の採取日時:住民の生活時間帯を避けて調整する

  • 採取跡の補修:調査で開けた壁・天井などの穴を補修する

  • 共用廊下の通行:作業中の通行経路や時間帯に配慮する

管理組合や住民へ調査の日程をあらかじめ周知すると、当日の立ち入りや作業がスムーズに進みます。

具体的にどのようなものがアスベスト調査の対象となるか?

マンションの大規模修繕は共用部に対して行われます。改修する範囲によって見るべき箇所は変わりますが、次のような建材で調査対象になりやすい例があります。

場所・建材

今回の工事で行う作業

アスベストが残っていることがある部分

外壁のタイル

下地の補修・張り替え

下地モルタル

壁・天井の仕上塗材

塗り替え・改修

既存の塗膜

廊下床の長尺シート

張り替え

シート本体と接着剤

屋上のアスファルト防水

防水改修

防水層

外壁のシーリング

打ち替え

シーリング材

駐車場天井のケイカル板・吹付材

補修・改修

ケイカル板本体、吹付材

過去に改修していても、下地は残っていることがある

「前回の修繕で調査済みのはずだから、今回は不要」と思われがちですが、過去に外壁や屋上の塗装・防水を行っていても、下地まで更新されているとは限りません。表面の仕上げ材だけを塗り替え、下地のモルタルや古い防水層がそのまま残っているケースがあります。

過去の修繕履歴の記録と、今回の工事で実際に手を加える層を照らし合わせると、調査の抜け漏れを防げます。過去の調査報告書が残っていれば、あわせて見ておきましょう。

調査するのは、今回の工事で手を加える範囲

「共用部をまとめて調べるべきでは」と思うかもしれませんが、事前調査の対象は、マンション全体ではなく今回の工事で撤去・加工する部分です。共用部のすべての建材を一度に調べる必要はありません。

工事範囲は、設計図書や工事仕様書をもとに施工会社とすり合わせます。次の大規模修繕で別の範囲に手を加える際は、その時点で改めて対象範囲を洗い出します。

仕上塗材は「レベル3だから軽い」と考えない

石綿を含む建材は、飛散のしやすさによって3段階のレベルに整理されます。外壁や天井の仕上塗材は、比較的飛散しにくいレベル3として扱われる建材です。

ただし、仕上塗材を電動工具で削る場合は、隔離養生などの措置が必要になります。レベルの数字だけで安心はできません。必要な対策は建材の種類だけでなく除去方法によっても変わるため、どの工法で除去するかとあわせて見極めます。

レベルごとの違いはアスベストの見分け方で詳しく解説しています。

その他の注意点

アスベストの事前調査は、外壁や屋上の大規模修繕だけの問題ではありません。別途行う設備の更新工事でも、工事の対象部分と必要な資格を把握しておく必要があります。

エレベーター更新など、個別の修繕工事でも工事対象部分を把握する

工事の例

工事範囲に含まれる場合に確認したい箇所

エレベーター更新工事

竪穴区画の吹付材、ピット内の防水モルタル、機械室の床・壁・天井

ケーブル更新・貫通部の改修

ケーブル貫通部のケイカル板等

機械室の改修

床の防塵防水塗料、壁・天井の吹付材

エレベーターは、かご等の設備そのものは工作物、昇降路の壁面は建築物に分類されます。「エレベーターの調査だから一つの資格で足りるはず」とは限らず、更新工事の内容によって必要な資格が変わります。

エレベーター更新やキュービクルの更新は、大規模修繕とは別のタイミングで計画されることもあります。工事の時期が近ければ、事前調査をまとめて計画すると効率的です。

キュービクルなどの変電設備は、工作物の調査資格が必要になる

マンションに設置されている高圧受電用のキュービクルなどの変電設備は、石綿障害予防規則が定める特定工作物のうち変電設備に該当します。

特定工作物のうち10種は工作物石綿事前調査者のみが事前調査を担当でき、変電設備もこの10種に含まれます。この資格要件は、2026年1月1日以降に着工する解体・改修工事から適用されます。

「いつもの調査会社に頼めば足りるはず」と思われがちですが、建築物石綿含有建材調査者の資格だけでは、この変電設備の調査を担当できません。工作物石綿事前調査者の資格を別に持つ担当者が必要です(両方の資格を1人で保有している担当者もいます)。

キュービクルの解体・更新を計画する際は、対応できる資格を持つ担当者を確保できるか確かめてください。特定工作物の詳しい種類や資格の区分は、工作物石綿事前調査者についてで解説しています。

まとめ

マンションの大規模修繕では、外壁や屋上の建材だけでなく、キュービクルなどの設備まで含めてアスベストの事前調査が必要です。事前調査は、築年や工事規模にかかわらず必要な工程です。

着工日の書面確認や、みなしとして扱う選択肢もあります。早い段階で進め方を相談すると、予算や工程への影響を抑えやすくなります。

小田原鉱石では、マンションの大規模修繕に関わるアスベストの事前調査・分析について、ご相談を承っています。工事の予定箇所や着工予定時期、図面や過去の調査報告書の有無をお知らせいただければ、必要な調査の進め方をご案内します。

理事会や総会に向けたスケジュールが決まっている場合は、その時期もあわせてお知らせください。まずはお気軽にご相談ください。

→ マンション大規模修繕のアスベスト調査を相談する

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