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今回の試料は、1970年代後半のボイラーから横引き煙道で接続された独立煙突内部に施工されていた断熱材です。
煙突用断熱材は、ボイラーや焼却炉などから発生する高温の排ガスに対応するため、煙突や煙道の内部に施工された断熱材で、アスベスト含有率が90%に達する高含有製品もあります。
主に断熱・保温や周辺構造物への熱影響の抑制を目的として、学校、病院、工場、公共施設などのボイラー設備や焼却設備に使用されてきました。
煙突内部は高温の排ガスや温度変化にさらされる環境であり、煙突用断熱材には、耐熱性・耐酸性に優れたアモサイトが使用されている例が多く見られます。
煙突内部に施工された断熱材は、長期間にわたる熱や排ガス、結露水などの影響によって劣化し、剥離・脱落している場合があります。
特に煙突頂部に雨水を避ける陣笠の無い煙突や、北海道の様に煙突内部の結露水が凍るような地域では劣化の進行が速いです。
劣化した断熱材は煙突下部の灰出し口などに堆積するため、点検や清掃の際にはアスベスト繊維を吸入するおそれがあり、防じんマスク着用などの石綿ばく露防止対策が必要になります。
また、温度差による煙突効果によって上昇気流が発生する場合があり、アスベストが煙突上部から周辺へ飛散する可能性もあるため、適切な管理が求められます。
さらに、煙突内部は狭く、作業場所が高所になることもあるため、除去工事では煙突内の気流も考慮した飛散防止対策や、作業環境の管理に高度な技術が求められます。
煙突煙道
断熱・ライナー
1964年-1991年頃
カポスタック・ニューカポスタック・ハイスタック・コンバインボード
煙突断熱材
分析内容
今回の試料は、設計図書に「カポスタック」と記載されていた煙突用断熱材です。
肉眼観察の段階でも、断熱材部分にアモサイトと考えられる繊維が確認されました。
一方、ライナー部分は確認されませんでした。
煙突内部から採取された試料には、すすや燃焼由来の付着物、硫酸塩などが含まれており、表面の変質も確認されました。
煙突内部では、排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)などの影響により、硫酸ナトリウムや硫酸カルシウムなどの硫酸塩が生成・析出する場合があります。
こうした析出物が試料に多く混入すると、試料全体に占めるアスベストの割合が相対的に低くなる可能性があります。
そのため、試料採取時には、断熱材そのものを採取できているか、析出物などが混入していないかを確認することが重要です。
分析では、すすなどの炭素質成分を除去するために灰化処理を行い、さらに酸可溶成分を塩酸処理によって除去したうえで、偏光顕微鏡による観察を実施しました。
偏光顕微鏡観察では、アモサイトに特徴的な直線状の繊維形態が確認されました。
屈折率1.680の浸液を用いた分散染色観察では、繊維の長軸方向に直交する方向(⊥)で青色、平行な方向(∥)で橙色の分散色を示しました。
さらに、クロスポーラによる観察では複屈折と直消光が認められ、鋭敏色検板を用いた観察では伸長の符号が正であることも確認されました。
これらの繊維形態と光学的性質を総合的に評価し、試料中にアモサイトが50~100%含有すると判定しました。
この結果は、設計図書に記載されていた製品名から想定される石綿の種類・含有率とも整合していました。
煙突内部は、長期間にわたり高温の排ガスや燃焼生成物にさらされる過酷な環境のため、アスベスト繊維の光学的性質が変化する事例が知られています。
今回の試料でも、一般的なアモサイトとは異なり、分散色が明瞭に確認できない繊維や、多色性を示す繊維が観察されました。
こうした観察結果については、使用環境による変質の可能性も考慮しながら評価する必要があります。
アスベスト分析では、繊維の形態や光学的性質だけでなく、建材の種類や使用環境、試料の状態なども踏まえて総合的に判断します。
そのため、正確な分析には、アスベストの分析技術に加えて、建材や設備の構造、使用環境に関する知識も重要です。

アモサイト:分散色 青(⊥,1.680)

アモサイト:分散色 橙(∥,1.680)

アモサイト:クロスポーラ 複屈折・直消光

アモサイト:鋭敏色検板 伸長の符号が正
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