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水練り保温材

解説

今回の試料は、1980年代温泉施設のボイラー温水が流れる配管のエルボ部から採取した水練り保温材です。

水練り保温材は、粉末状の保温材料に水を加えて練り合わせ、配管や設備の表面にこてなどで塗り付けて成形する保温材です。
設備の形状に合わせて施工できることから、主にボイラー、蒸気配管、温水配管、タンク、熱交換器などの設備に使用されてきました。特に、配管のエルボ部や継手、バルブ、フランジ周辺など、成形保温材では施工しにくい複雑な形状の部分に多く使用されています。
また、成形保温材の継ぎ目や隙間を埋めるために使用される場合もあります。
原料には、けいそう土や炭酸マグネシウムなどが使用され、製品によって材料の配合が異なります。
水練り保温材には、アモサイトやクリソタイルなどのアスベストを配合した製品があります。
また、原料となる天然鉱物に由来して、アクチノライトやトレモライトなどの鉱物が不純物として含まれる場合もあり、その一部が石綿状の繊維形態を示すことがあります。
石綿含有保温材は、一般的にレベル2の建材に分類され、劣化や損傷によってアスベスト繊維が飛散するおそれがあるため、取り扱いには注意が必要です。
小田原鉱石が実施した現地調査でも、エルボ部の外装材が劣化・破損し、内部の保温材が露出したり、破損箇所からこぼれ落ちたりしている事例を複数確認しています。
施設の維持管理においては、定期的な点検を行い、劣化や破損の状況を把握することが重要です。
また、同じ配管でも直管部とエルボ部では異なる保温材が使用されている場合があるほか、補修や設備の更新によって部分的に材料が交換されていることもあります。
特に工場などの設備では、年度ごとの修繕計画に基づいて配管の補修や更新が行われるため、設置年代だけでなく、過去の改修履歴や現地の施工状況を確認する必要があります。
そのため、事前調査では同じ配管系統であっても一部分だけで判断せず、配管の経路に沿って各部位を確認し、保温材の種類や施工状況の違いを適切に把握することが重要です。

施工箇所例

ボイラー・配管・発電機

主な用途

断熱・保温

使用時期

1890年~1988年頃

代表的な商品名

けいそう土保温材・ハードセメント・パーライト保温材

報告システム上の名称

保温材

分析内容

今回の試料は、ハードセメント系の水練り保温材で、偏光顕微鏡による観察では、アモサイトとアクチノライトの2種類のアスベストが確認されました。
① アモサイトの観察結果
偏光顕微鏡観察では、アモサイトに特徴的な直線状の繊維形態が確認されました。
屈折率1.680の浸液を用いた分散染色観察では、繊維の長軸方向に直交する方向(⊥)で青色、平行な方向(∥)で橙色の分散色が確認されました。
さらに、クロスポーラによる観察では複屈折と直消光が認められ、鋭敏色検板を用いた観察では伸長の符号が正であることも確認されました。
② アクチノライトの観察結果
屈折率1.630の浸液を用いた分散染色観察では、分散色を呈する繊維状鉱物と多数の劈開粒子があり、繊維の長軸方向に直交する方向(⊥)で青色、平行な方向(∥)で黄色の分散色が確認されました。
さらに、クロスポーラによる観察では複屈折と一部の繊維に斜消光が認められ、鋭敏色検板を用いた観察では伸長の符号が正であることも確認されました。
これらの繊維形態と光学的性質を総合的に評価した結果、アモサイトとアクチノライトの石綿含有率はそれぞれ5~50%と判定しました。
今回のように、複数種類のアスベストが含まれる試料では、それぞれの繊維形態や光学的性質を確認し、適切に識別することが重要です。
また、アクチノライトは、ハードセメント系の保温材に天然鉱物に由来で含まれる場合があります。
このような、天然鉱物に由来するアスベストの混入が疑われる建材では、分析方法の選定にも注意が必要です。
JIS A 1481-2による分析方法は、天然鉱物に対応していない為、JIS A 1481-1に基づく偏光顕微鏡による定性分析で行う必要があります。
アスベストの分析には、原料となる鉱物や保温材の特性に関する知識も必要となります。

アモサイト:分散色 青(⊥,1.680)

アモサイト:分散色 青(⊥,1.680)

アモサイト:鋭敏色検板 伸長の符号が正

アモサイト:鋭敏色検板 伸長の符号が正

アクチノライト:分散色 青(⊥,1.630)

アクチノライト:分散色 青(⊥,1.630)

アクチノライト:分散色 黄(∥,1.630)

アクチノライト:分散色 黄(∥,1.630)

アクチノライト:クロスポーラ 複屈折・斜消光

アクチノライト:クロスポーラ 複屈折・斜消光

アクチノライト:鋭敏色検板 伸長の符号が正

アクチノライト:鋭敏色検板 伸長の符号が正

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