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今回の試料は、1970年代前半に建築された鉄骨造(S造)建築物の梁・柱に、耐火被覆を目的として施工されていた吹付け石綿です。
吹付け石綿は、アスベストとセメントなどの結合材を混合し、鉄骨の柱・梁や天井、壁などに吹き付けて施工された建材です。
主に耐火被覆、断熱、吸音を目的として、工場、倉庫、事務所、機械室など、さまざまな建築物で使用されてきました。
使用されたアスベストには、クリソタイル、アモサイト、クロシドライトがあり、石綿含有率が55-70%の製品が多いです。
吹付け石綿は、経年劣化や振動、改修・解体工事などによってアスベスト繊維が飛散するおそれがあり、日常の施設管理においても注意が必要です。
1975年には石綿含有率5%を超える吹付け作業が原則禁止され、その後、ロックウール吹付け材等の代替製品への切り替えが進みました。
鉄骨造の建築物で多く見られますが、小田原鉱石では、木造住宅の浴室天井に施工されていた事例も確認しています。
梁・柱・壁・デッキプレート
耐火・断熱・防音・調湿
1956年-1975年頃
トムレックス・ノザワコーベックス・ベリーコート・サーモテックスA
吹付け材
分析内容
今回の試料は、肉眼観察の段階でもアスベスト繊維の存在が疑われる状態でした。
分析では、有機成分を除去するための灰化処理と、セメント系結合材などの酸可溶成分を除去するための塩酸処理を行ったうえで、偏光顕微鏡による観察を実施しました。
偏光顕微鏡観察では、クリソタイルに特徴的な波状の繊維形態が確認されました。
屈折率1.550の浸液を用いた分散染色観察では、繊維の長軸方向に直交する方向(⊥)で青色、平行な方向(∥)で赤紫色の分散色を示しました。
さらに、クロスポーラによる観察では複屈折と直消光が認められ、鋭敏色検板を用いた観察では伸長の符号が正であることも確認されました。
これらの繊維形態と光学的性質、顕微鏡下でのアスベスト繊維の割合を総合的に評価し、クリソタイルが50~100%の範囲で含有すると判定しました。
アスベスト分析では、繊維の形態や光学的性質だけでなく、建材の種類や試料の性状なども踏まえて総合的に判断します。
そのため、正確な分析には、アスベストの分析技術に加えて、建材や施工方法に関する知識も重要です。

クリソタイル:分散色 青(⊥,1.550)

クリソタイル:分散色 赤紫(∥,1.550)

クリソタイル:クロスポーラ 複屈折有・直消光

クリソタイル:鋭敏色検板 伸長の符号が正
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